World of Warcraft: 年末スペシャル「Morbent Felを倒せ」その3

Jitters の日記

「この数週間に起こった事件の凄惨さは,すでに私の心が耐えられる限界を超えている.この日誌に文字を書き連ねることによって,なんとか狂気が押し寄せることを防いでいるにすぎない.これは,私が死の世界へひきずりこまれてしまった仲間に罪を告白し,懺悔をしていると感じているのだろうか.それとも,暗澹たる思いに満たされた私の心を,紙という限られた場所にではあるが,解放できていると感じているのかもしれない.

私はこの日誌を書く前,別の本を書き始めていた.しかし,すでにそれは私が取り戻すことができない場所に置いてきてしまった.だから,私はこの一部始終を最初から書きなおすつもりだ.しかも今度は,本当の始めから書き始めるつもりだ…

それは,彼らが Roland's Doom と呼んでいる鉱山の中で,呪われた鎌の調査をしたことから始まったのだ.まさに,それがすべての始まりだった.これより前は,私たちの Duskwood における作業の進捗が良好で,Defias Brotherhood はそれに満足していた.その鎌が見つかる前は,ここは Northshire Vallay と同じくらいに平穏な場所だったのだ.

しかし,私が鉱山の瓦礫の山から柄が突き出しているあの鎌を見つけてから,すべてが変わった.鎌は私に自分自身を解放するために,私にそれを引き抜かせる呪いをかけたのだ.そして Roland's Doom は,鎌が引き抜かれた直後から死で満たされた忌むべき地となったのだ!

何が起こるかを予め知っていたならば,その古代文字が彫りこまれた木の柄を握ろうとする私自身の手を切り落としていたに違いない.後悔してもしきれないのだ! 私は,後悔とは老人だけのの特権であるとばかり思っていた.しかし今は,それが老人のものだけでないことを知ってしまった.脱ぎ去ることができない後悔という名のマントを,惨めさに体を屈して肩から羽織ってしまったかのようだ.そう,それは絶望というのかもしれない.しかし,それでも私はこのを日誌を書き続けねばならない…

鎌が解き放たれた直後,得体の知れない変化が鉱山の中を走り,鉱山全体がさざ波を起こしているかのようだった.揺らめく松明からの光が何かによって歪められ,私たちの声は異様なまでにも増幅されて強く響き渡った.あるときは,誰かのささやき声がまるで叫び声のようにトンネルに響き渡り,全員が耳を手でふさがなくてはならないほどになった.しかしあるときは,大声で叫んでも風のささやきのようになってしまい,ほんの数歩先までしかその声が聞こえないほどに小さくなった.

もっとも,この奇妙な状況に対する私たちの驚きは長くは続かなかった.これは本当に,鉱山でこれから起こることの前触れにすぎなかったのだ.そう,Worgen が現れたのだ.

奴らは,鉱山のいたる所から現れたのだ.足元の埋め立てられた穴を掻き毟って出てきたものや,鉱山を支える木材の上から現れるものもいた.そこにいた仲間の半分が,パニックに陥った最初の数分の間にやられてしまった.私を含む残り半分は,その場から逃れようとした.必死で走っている間にも,たくさんの仲間が奴らの歯牙にかかって連れ去られたり,引き裂かれるのが見えた.短く鋭い悲鳴が,鉱山の静けさを切り裂いているかのようだった.

恐らく,私はそこから生きて帰った唯一の人間だろう.

私が言えることは,あの夜,私は生き残れたということだけだ.私はいつも用心深かった.敵の拳をかわすことや,落とし穴から脱出することも得意だった.私の Jitters (神経質なやつ) というあだ名も,この性格に由来している.この用心深い性格が,私に何かを警告してくれたことで生き残れたのかもしれない.

もしくは,瓦礫から引き抜いたあの鎌のせいかもしれない.必死で逃亡している間に,その鎌をどこかに落としてしまったので,鎌それ自身が直接的に私を守ったわけではないだろう.しかし,Worgen が Duskwood に現れるきっかけを作ったのが私であるのなら,もしかすると Worgen は私に生き残るという皮肉な名誉を与えたのかもしれない.なんと呪わしいことだろうか.

そうでなければ,私が引き起こした Duskwood の変化の一部始終を見届ける運命を背負ってしまったのかもしれない.Worgen がこの地に激しい攻撃を加え,不浄の闇で包み込もうとしているとしても,私はその現実から目をそらすことが許されない身となってしまった.

もし,本当にそれが私の運命であるなら,それは Worgen だけではなく,さらなる別の要素も含んでいるはずだ.なぜなら,Worgen は Duskwood を支配しようとする唯一の勢力ではないからだ.Deadwind Pass から現れた fiend たちも Duskwood を支配しようと企んでいる.

Fiend に関するこの話は,私の物語の次の章となるはずだ.そして,願わくはそれが最終の章となってほしい…

その4に続く)