World of Warcraft: 年末スペシャル「Morbent Felを倒せ」その2

本の記述はそこで終わっていた.残りのページはすべて白紙だった.明らかにまだ続きがあると思われたが,おそらくは何らかの理由で書かれなかったのだろう.この記述だけでは,農場に何が起こったのかは分からなかったが,Sven ならば何か分かるかもしれない.ともかく,Sven にこの本を持って行ってみることにした.

Sven はその本を手に取って読み進めているうちに,不意に大声を出して言った.

「私が見た影は,きっと家族が殺される現場を見ていたんだな! その人物に,ぜひとも聞いてみたいことがある….しかし,いったい誰なんだろう!」

Sven は興奮した様子で続けた.「何とかして,その影が誰だったのかを突き止めたい….お願いします.その人物を突き止めてもらえませんか.その人物は,何か人にはいえないことを隠しているはずです.残念ながら今の私は,あなたが知っている以上の情報は持ち得ないのですが,この本を持って町に行ってみてください.町で人々に尋ねれば,この本の持ち主が見つかるかもしれません.」

落ち着かない様子の Sven から本を受け取って,Darkshire の町へと向かうことにした.薄暗い森の道を抜けて Darkshire の町へとたどりつき,誰から見せたものかと思案にくれたが,ふと一人の人物を思いついた.その人物とは,霊能力をもっている Madame Eva だ.彼女は別の事件(The Legend of Stalvan)でその能力の高さを見せている.彼女に見せれば何らかの情報が得られるかもしれない.そう思い,彼女のところへ持って行った.案の定,彼女は何かを感じ取ったらしい.

「そうね,だれかが最近この本に触れています.復讐心に駆り立てられた誰かが….本に残されている印象は…少なくとも,最初の所有者だった人物の印象は,ほんのわずかになっています.ただ,その所有者は,少なくとも Darkshire の出身者ではないようですね.」

Eva は本を渡しながら言った.

「この本をお返しします.あなたの探す人が見つかるとよいのですが.町の人々にも訪ねてみるとよいでしょう.何か他の手がかりがみつかるかもしれません.この本を書いた人は Darkshire の出身者ではありませんが,本を買ったのはこの町のようですよ.」

彼女の話が本当なら,この町の誰かがこの本を売ったということだ.その人物を見つけることができれば,誰に売ったかがわかるかもしれない.

町の人たちをひとりずつ当たってみたところ,運良く本を売ったという人物を見つけることができた.Clerk Daltry という人物だった.彼は本を売った人物について話してくれた.

「たしか1カ月ほど前だったと思います.白紙のこの本を,どこの誰とも素性が分からない男に売りましたよ.彼は自分の名前は名乗りませんでしたが,とても神経質で何かに怯えるように異常なほどビクビクとしていましたね.こんな話が何かの役に立てばよいのですが….そうだ,宿屋に行ってみるといいかもしれません.本を買った人物がこの町にしばらくいたのなら,誰かが宿屋でその姿を見ていているに違いありません.」

確かにそのとおりだろう.さっそく宿屋へと行ってみた.すると宿の主人の Smitts が,それらしい人間を見たと言った.

「確かに,この本のことは覚えているぞ.本の持ち主は、数日の間ここで宿をとっていた.バーでこの本に何かを書きこんでいたな.しかし,誰かに追われていたのか,突然奴は町を出ていった.確か奴を最後に見たのは,町の西にいるところだったな.まるで,次の隠れ家でも探しているかのようだった.この町の西には Raven Hill がある.奴はそこにでも向かったのかもしれない.…しかし,奴が生きて見つかることを祈ってるぞ.町の外はとても安全とはいえないからな.運が悪ければ,獣に食われちまっているかもしれないぜ.」

どうやら本を買った人物は,ずいぶんと前に町から出て行ってしまったらしい.ともかく西に向かっていったという情報だけを頼りに,町から道沿いに西へ向かってみることにした.

薄暗い道を進んでいくと,Smitts が話していた Raven Hill の入口に差し掛かった.その時,ふと廃墟の井戸端に人影があるのに気がついた.その人影は Jitters という奇妙な名前の人物だった.最初,彼は私を非常に警戒している様子だったが,彼の本を見せると,安堵とも悲嘆ともとれる溜息をついてからこう話し始めた.

「たしかに,私がこの本を書きました.ついに私を見つけたというわけですね.本を読みましたか? そうだとしても,その本にはまだ真相の半分しか書いていないのですよ….なぜなら,私は書き終わる前に Sven の農場に本を隠して逃げるしかありませんでした.しかし,ここに残りの半分を綴った日誌があります.これを Sven に届けてください.農場で何が起こったのか,すべてここに書かれています.この数週間というもの,私の支えとなるものはこの日誌だけでした.本当はこの日誌は渡したくはありませんが…これを Sven に見せることで,彼に会うことを避けられるならば,それも仕方がないでしょう.」

そう言って彼は日誌を取り出した.どうやら運良く本の作者に巡り合えたようだ.しかし,彼から受け取った日誌には,恐るべきことが書かれていたのだ.

その3に続く)